「殺陣」という言葉の由来
舞台や映画作品の乱闘シーン(立ち回り)を意味する「殺陣(たて)」という言葉の起源は、江戸時代に遡(さかのぼ)り、歌舞伎の中で演じられた闘争形式のことを「タテ」と呼んでいたと伝えられています。
享保の頃、1820年代当時は、二人で斬り合うことを「立ち回り」と言い、大勢で斬り合う(闘う)ことを「殺陣」と言いました。
その後、大正時代には、一般に「殺陣」という言葉が広がり、なじみのあるものになったと言われています。しかし、この言葉は、古くは「能楽(のうらく・のうがく)」(注1)の世界でも用いられていたことから、芸事の世界ではかなり古い時代から使われている特殊用語であったと思われます。
当初「さつじん」と呼ばれていた「殺陣」を、現在のように「たて」と読むようになったのは、1936年(昭和11年)に上演された「殺陣田村」(たてたむら)(注2)の公演がきっかけでした。その時からその呼称が広まり一般的に「殺陣」と呼ばれるようになりました。
以上、永原享 著「殺陣への道」より抜粋
注1)能楽(のうらく)平安時代に成立し
た「猿楽」(さるがく)が源流で、鎌
倉時代に成立した芸能です。
注2)殺陣田村(たてたむら)とは「田村」
という謡曲(能で謡(うた)う詞章のこ
とです。謡 (うたい)をバックミュージ
ックにして、芝居に殺陣を組み込ん
だ演目の名前です。