無双直伝英信流居合 技の目録 <奥居合立業の部 13本>

 


一本目「行連」(ゆきづれ)

[ 意義 ] 左右の相手と歩行する場合、機先を制して一歩やり過ごして、右の敵を抜打ちし、さらに左の敵を真向に斬り下す業である。

 

二本目「連達」(つれだち)

[ 意義 ] 我が中間にして、雁行の場合、左の敵を刺突(しとつ)し、さらに右の敵を真向に斬り下す業である。

 

三本目「惣捲」(そうまくり)

[ 意義 ] 相手が正面より斬り込んでくるのを、我が刀を抜いて一歩さがり、相手の刀を摺落(すりおと)しつつ上段に振りかぶり、相手の退くところを追撃して倒す業である。または、多数の敵を追撃してゆく業である。

 

四本目「惣留」(そうどめ)

[ 意義 ] 狭い板橋、または堤等の両側に自由にかわせない細道の場合、全面より仕掛けて来る敵の胸部を袈裟に斬りつけ一人宛倒してゆく業である。

 

五本目「信夫」(しのぶ)

[ 意義 ] 「夜太刀」ともいい、暗夜歩行中、正面より敵を認め、我、体を左に転じ相手の近寄るのを待ち受け、相手の真正面の地面に剣先をつけて音をさせ、引き付け、右斜前より斬り付け倒す業である。

 

六本目「行違」(ゆきちがい)

[ 意義 ] 歩行中二人の相手が前後して進んできたので、我はその中間に進み、すれ違い様に機先を制して全面の相手の顔面を柄当てし、後に振り向いて背後の相手を倒し、さらに全面の相手の方に右回りに向き直り斬撃して倒す業である。

 

七本目「袖摺返」(そですりがえし)

[ 意義 ] 我と敵との間に群衆があるので、これを押しのけて前方の敵を一刀両断に倒す業である。

 

八本目「門入」(もんいり)

[ 意義 ] 我、門の出入りに際し、門の中と外に多数の敵の攻撃を受けたとき、門の中に進み内外の敵を倒す業である。

 

九本目「壁添」(かべぞえ)

[ 意義 ] 我が左、または右に壁があり、普通の方法で抜刀ができない場合、刀を上方に抜きとり、相手を斬撃する業である。

 

十本目「受流」(うけながし)

[ 意義 ] 歩行中に相手が、我が正面より斬り込んで来るゆえ、我は体を右に開いて相手の刀を受流し、相手の肩口に斬り下ろして勝ち、左足を引き血振るいし納刀する。(要領は正座の「受流」と同じである)。

 

十一本目「暇乞」(いとまごい)

[ 意義 ] 暇乞は上意討ちとも言われ、主命を帯びて使者に立ち、相互に挨拶をする礼の体勢より抜打ちにする業前である。

 彼、我の挨拶の際、相手に機先を制して行う刀法が三本ある。それは以下の三つである。

(その一)目礼するやいなや、ただちに抜刀して相手を真向に斬り下す。

(その二)両手を着いたところより、ただちに抜刀して相手に真向に斬り下す。

(その三)最敬礼に深く頭を下げ、ただちに上体をおこしながら抜刀して相手の真向に斬り下す。(要領は正座の「抜打」と同じである)